Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
『どうだい。そろそろ、めしにしようじゃないか、諸君』
と、私は言った。
『…………』
二人とも、何とも答えない。
『ひどく沈着に構えているじゃないか――ゆんべの味噌が少し残っているはずだ』
私は、こう言いながら玉汗が寝捨てた布団にくるまっている米櫃を取りに行こうとすると、二人は一時にどっと笑い出した。そして玉汗は眼鏡を羽織の裾で拭きながら、
『味噌もめしも、ないよ』
と、言うのだ。玉汗は不必要に眼鏡を拭うくせがある。
『なぜ?』
『夜なかに、二人で食っちゃったよ』
これは、銀平が言うのだ。
『あっ! ほんとか』
私は、転ぶようにして、布団のなかの米櫃へ飛びついた。だがほんとうに米櫃は軽かった。私は、ぼうっとしてしまったのだ。
気が、われに返ってから二人にきいてみると、
『君に、先手を打たれるといけないと思って、夜なかに起きて食べた訳さ』
『ひでえなあ』
『悪く思ってくれるな』
ああ、やんぬるかなである。
九
その日、小諸町から善光寺街道へ路をとって、途中でみつけた蚕糸組合や郵便局へまで、拙い俳句の恥をさらしながら上田町を過ぎた。信州は昔から俳諧の盛んなところで、達者な人が数多くいるのを知らない訳ではなかったが、修業のためと考えて、歩きまわったわけであるなど、と私らは勝手な理屈をつけて歩きながら話し合った。