Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
それはどちらでもいいとして、この席上で思いもよらぬ人に邂逅した。
三
京城到着当夜の歓迎宴は、京喜久というので開かれた。杯がしげくまわりはじめると、座に一人の老人が起って大きな声で、『二十年振りで会う木村義雄君にご挨拶を申しあげる』と説きだした。何を語るのかと耳を傾けていると『私は朝鮮銀行にいる時代、つまりいまから二十年前、東京へ出張を命ぜられ麹町のある旅館へ宿を取った。翌朝宿の浴衣を着て近所の床屋へ行き、頭をきれいにしてさて勘定と懐を捜すと入れてきたはずの財布がない。止むを得ず床屋から宿まで馬を連れてきた訳だが、財布紛失のことを麹町警察署へ届けた。ほどなく警察から落とし物が発見されたという通知に接したので行って見ると、そこに拾い主であるという久留米絣の袷を着た十五、六歳の少年が立っている。財布の中は現金もさることながら重要書類が入っているので私はこの少年に対して深く感謝した。そして規定に従って謝礼金を取ってくれといったが少年は何としても受け取らない。僕は道に落ちていたものが財布であったから落とし主はさぞ困っているのだろうと思ったので直ぐここへ届けただけである。