Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
そんなわけで、それ以来熊田邸と頼母木とは全く交渉なくなった。そのことがあってから幾十年、こんど久し振りで三途の川の対面である。互いの微苦笑が、頬の神経に細かい顫動を与えたことであろう。
さて、星うつり物かわり昭和十三年の暮れ、野間清治のあとを継いで頼母木桂吉は、報知新聞の社長となってきた。新社長は、大晦日に近いある晩、古い報知新聞の関係者数十名を会席に招待して、就任の挨拶をした。私も古い関係者の一人として招かれて行って頼母木の挨拶の言葉をきいたのだが、新社長が言うに、自分はいままで自分の生命として政治に、自分の力量のあるだけを尽くしてきた。齢すでに七十を越して、このうえ望むべき何もない心底であった。ところが図らずもこのたびある人から、報知新聞社長就任の慫慂を受けたのである。つらつら報知新聞の現在の社業をみると、全く昔日の俤がない。自分も諸君と同じに、報知新聞の古い関係者である。そとにあっても、社業回復を望む念は一日もやまなかった。されば自分は、直ちに社長就任を快諾した。即ちこれは七十余歳の老骨に、死所を与えられたものである。死華であろう。これからは、この痩躯に鞭うって報知社再興のためには、倒るとも努力を惜しまないつもりだ。