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Japanische Klassiker mit Furigana

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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme

Aozora Bunko

顔や容が色めき立った。まず、森山さんが私を発見し、私と並んで歩いてくる山岡を、それと睨んで妹の袖を引き、電光の如き敏捷さで眼配せしたに違いない。

私は妹さんの顔を見た。森山さんと、瓜二つである。丸い顔に、剥げるかと思うほど厚くつけた白粉が、額から流れ落ちる汗に二筋、三筋溶けて、蚯蚓のように赤黒い肌が現われている。低いからだを袂の長い淡紫紅の夏羽織に包んだところは、まるで袋にでも入ったようだ。髪の毛はあかい、手は黒い。何と、お粗末の婦人だろう。一町もさきの遠方から森山さんを認めたとき、その傍らにいるのが、妹さんであろうと直感したのは、当然だ。

『あれだ』

と、私は小さく囁いて山岡の顔を見ると、山岡は俄にぷんとして形容のし難い苦い表情をしたのである。山岡も、逸早く彼の女の姿を認めて――あれだな――と、判断していたらしい。

私は、山岡を捨てておいて、森山さんの傍らへ歩いて行って、挨拶も抜きにして、

『あの紳士です』

と、囁いた。森山さんは、口の中で何か言ったが私には聞きとれなかった。そして兄妹顔合わせて、これも名状し難い表情をするのである。私は刹那に――これは、いかん――と、思った。