Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
余は、なぞらへて知るべし――と、あった。
文化文政頃の酒徒が、元享永祿の昔、伊勢国で酒一升銭十九文から二十三文位の値であったという古い記録を見て、大いに自分達の不幸を嘆じたさまが、眼に映るようだ。けれど、天正時代となると既に酒が高くなったのをこぼしているのがある。『天正日記』に――天正十八年十日、はれる。江戸入のしたくにて万右衛門殿はじめ、とりどりかけはしる。酒一升七十文、するがより五文たかし。殿様今日御城へ御入也。酒一升七十文は、米価に比するに大抵五倍の差あり、酒価の古記に見えしものを参考するに、余り貴きに似たり――と、昔を恋しがった。
されば、昭和時代の我々酒徒が、酒が高くなったのに愚痴を重ねて囁くのも当然だ。もうこれからは、白粉をつけた女のいる酒場で一杯二円、三円の洋酒など、山芋が鰻になっても飲むまいぞ。もし、僕たちが若い時から飲兵衛でなかったら、随分いま頃は金持ちになっていただろうなあと嘆息まじりに飲み仲間で談じ合うことが度々ある。極く内輪に見て、一日平均三合宛飲んだとすれば、この歳になるまで一体どの位の量になったろう。かりに三十年間飲んだとして、一万九百五十日、計三十二石八斗五升となる。