Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
従ってどの程度信じていいかも分らないが、父の言を疑うこともなかった白紙の幼時に聞かされたことのみである。しかしそれが後々のぼくに影響が無かったとは云いきれない。もし、あったとすればぼくには重大だったわけである。現代の中では理解しがたいようなものだが、ぼくを語るためにぼくの一髪をまず手にとってみるというつもりで思い出してみる。
父の兄に、秋山という人がいた。どういうわけか、養子に出た人らしい。維新のさい、藩主の若殿について京都守護の一兵卒となって中央へ行った。やがて解任後、小田原へ帰って来たが、見事な花柳病にかかっていた。小田原藩士ばかりでなく、京都へ勤務に上った藩では、どこにもそんな若侍がたくさんあって、上方唄の唄える侍というと、眉をひそめられたものだそうだ。
父の兄秋山氏も御多分にもれない名誉の若侍だったわけである。その花柳病もよほど悪質だったとみえ、よく落語にあるような、鼻の障子がとッ外れて、足腰も立てない重さであったらしい。そのくせ楽天家でまた小粋な人で、髪はいつも艶々と撫で、帯や着物は凝った物を着て、よく南縁に坐っては、徒然になると、柄の短い座敷箒を膝に抱えた。