Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
喧嘩
そういう小遣銭は、どうしたかといえば、金などは児童の手にしてならない物というのが常識だった頃である。何か正しい理由がなければ母へねだる事もできなかった。ところが家庭の一隅に、みどり屋雑貨店がある。ぼくは、そこの売溜めから自由に銀貨を持ち出すことができた。――自由にといっても、もちろん、家人の眼を偸んですることなので、智恵と敏捷を必要としたのはいうまでもない。こんな行為からみても、ぼくという素質がじつに危なッかしい子であったことは間違いなかった。正直、その頃の罪を意識しない悪智の例を幾つとなく考え出すと、今でも肌がそそけだッてくるような思いにたえない。
喧嘩
――そんなふうにすでに悪智恵も相当なぼくだったが、しかしそのぼくは誰の目からも「おとなしそうな」と見られていた。
「いつも、きちんとしていらっしゃる」と賞められたり、殊にぼくは体の小さいことと笑靨の深いのが顔の特徴であったらしくて、家庭の女客などからも、あいさつに出ると「ま、お可愛らしいお坊っちゃんですこと」などとよく云われて、自分の悪い面だの内面の芽生えは周囲の大人たちからは、いっこう看破されていなかったようである。