Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
と云われれば云われるほど、家の中にねばっていた。そして、宵になると、小さい兄妹達がみなして代わりばんこに、梯子段を盗み足に登って行っては、宴会の灯とお嫁さんを覗きに行った。
ただこんな時には、いつも手伝いに来てくれて、陽気な調子で、茶の間や台所じゅうを笑わせ抜くあの混血娘のおテイちゃんが、その日は姿も見せなかった、おテイちゃんだけでなくお母さんの近藤夫人も二階のお客の中にいなかった。もっとも、おテイちゃんの足が自然遠くなったのは、その前からのことで、薄々、義兄と下宿先の娘のことも、耳にしていたにちがいない。ぼくにはまだ、おテイちゃんの気持ちになってみるまでの能力はなかったが、後で思うと、おテイちゃんはその晩、独りでどこかで泣いていたのではあるまいか。ただし、それはぼくの想像である。ぼくが当夜の義兄ぐらいな年齢に達してからそう思われた事にすぎない。
披露宴からすぐ新婚旅行へ立つという極りのいい今の習慣は、あの頃にはまだ無かったのではあるまいか。欧風米式、何でも新奇を競って、東京人の洋服や着こなしを、田舎くさい官員さん好みと笑い、ナンキン町仕立ての洋服を粋としていた横浜人の間にも、新婚旅行の風だけは、まだ見なかったように思われる。