Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

たとえば、ぼくらのそんな家庭でも、頭数六、七人もの子供の朝食の膳に、よく生卵を割ったものだが、大きな丼に、きまって卵は三個しか女中が割らない。それへ醤油はたくさん目に注いで掻廻し、七つの御飯茶碗へ等分にかけ分ける。だから「そっちへ黄味ばかり入った」とか「こっちが少ない」とか、よく食膳のいざこざになった。どうかして、卵を一人でまるごと一ツ御飯へかけて食べてみたいとは、ぼくらの念願だったものである。

繊維類にしても、絹とか羽二重とかいえば、高貴な感じさえしたものだった。ちりめん、めいせんといえば、よそ行きを意味する。どこの家でも、女は夜なべに、子供の足袋の穴や洗い張り物を、眼をいたくして針の先でかがっていた。燃料やランプの油はいうまでもないし、ちょっと建てこんでいる住宅地の横へ入れば、そこの勝手口や縁先などの日向に、お飯櫃や釜底の御飯つぶを流し元で掬った物が、ていねいに目ザルに並べられ、白い干飯として干し上げて保存してゆく習慣のあることが軒毎によく見られた。それが大きな紙袋に蓄まると、賽の目に切った寒餅や黒豆など加えて、母が砂糖煎りにしてくれたのを、ぼくらはあられと呼んで、冬の菓子によろこび合ったことだった。