Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

きのの奉公先は横浜公園近くの西洋料理店で、奥の子守さんという事であった。同時に桂庵にすすめられ、次女のカエも、まだ九歳でしかなかったが、伊勢佐木町通りの吉野屋というお汁粉屋の小女に出してしまった。あとは乳のみ児と、四つの浜子と、小学校へ入ったばかりの素助だけなので、もうこれ以上は喰べる口の減らしようも無かった。

二人の子の奉公先から、母はそのさい、給金の前借でもしたのであろうか。何とか幼児の冬支度などしてはいた。けれど家賃の停滞までは皆済ましきれず、家は追い立てを喰い、同じ西戸部の手狭な家へ移った。

そこは戸部坂の細民街を西へ遠く入った丘陵の新開地で、近所もまばらだし人通りも少なかった。だから易断の看板などに寄り附く客は無かったが、それでも父は、おれも働いてはいるのだという云いわけのように、机を構えて坐っていた。そして何かで、母の財布に少しのゆとりでもあると、朝からでも酒を欲しがった。それも出所当時は、久しい断酒で、すぐ酔いの廻る風であったが、だんだん以前のような底抜けの酒量を発揮し出し、終日、飯茶碗は手にもせず、酒に初まって酒中に寝仆れる日もままであった。