Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

浜ちゃん

仲間の者の事故を聞き知っても、その者が日頃そうした注意に無頓着な方だとすぐ「ゆうべのせいだろう」と冷笑したりするのである。命知らずに見えながら肌には“お守り”なども人知れず持っている彼らであった。

浜ちゃん

ドックの勤めだけは辛かった。毎朝の足が重くて、一朝とて元気に家を出られなかった。けれど依然貧乏やつれの母を見ると、そしてその母がお弁当をつめ、子のぼくにいそいそ心をつかって、送り出してくれたりすると、やめたいやめたいと思いながらも、口には、云い出せなかった。

いつか、半年以上も勤めた。ぼくは十九になった。その年の五月である。四女にあたる妹の浜子が死んだ。浜子の死ほど一家の者に深い痛恨を刻みこんだものはない。

浜子はわずか九歳だったが、数ヵ月前、房州の田舎町の飲食店へ奉公に出されたのだった。当時の貧乏人の家庭では、単なる口減らしという目的だけでよく子供を外へ出す手段をとったらしいが、そんな幼い者を、どうして房州へなどやったのか。母は、後では悔みに悔んで泣く泣くぼくに打明けたが、どうしても十五円程の必要に迫られ、先はよい主人という口入れ屋の話に乗って、前借の為に手放したものである。