Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
中の私から、いまだに大して成長もしていない自分に思われて仕方がない。だから人がまま「お若いですなあ」と云うのに対して、このちぐはぐな気持ちをどう現わしようもなく、私はいつもこう答えて笑いはぐらすのであった。「いや幼稚なんですよ。若いというよりは、つまり幼稚というもんでしょうな」
正直、私は自分の中に今以て、老来なおさらもどかしい幼稚が失せないのに当惑している。この書が上梓されたすぐあとでは、谷崎潤一郎氏が「幼年時代」を書かれ、また長与善郎氏の「心の遍歴」などもあった。それを見ると、ほぼおなじ時代をやや後から歩いていた自分ではあるのに、両者の高い晩節の嶺から振向かれた過去の整然とした記憶や心象の構造にひきくらべて、私の少年期や「人生中学」の記などは、何とも他愛のない泥濘の回顧に過ぎぬ感のみが多く、気恥かしいかぎりでしかない。で、折があったらもう少し補筆修正しておくべきであるとも思うのだが、どうもいつまでも幼稚が意識にある自分には、自己の過去像を本気で描き残しておこうなどという感興にはなれないのでついそのままになっているのである。
昭和三十六年正月
英治追記