Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
「付記」
妻、この夜初めて、余の病症のまことは「肺癌」なることを打ち明ける。あらましは自分にも察しられていたせいか、かえってすがすがしく思う。明朝までの間、あるいは、眠られぬかもしれぬと案じられたが、案外よく眠り得て覚める。六日、午前九時十五分手術を受け、十二時四十五分終了、もちろん、全身麻酔を受けてのこと、何も知らず。十三日、抜糸。この日、「私本太平記」の連載、紙上にて完結を告ぐ。二十六日、初めて入浴、予後よろし。
十一月十五日、初めて病院の屋上に出て日光を浴み、蘇生の感に吹かれる。病棟の各室にもこの前後、平林たい子氏、壺井栄氏、伊東深水氏、伊藤熹朔氏など入院され、また退院されて行く。
十二月三十一日、試験的に外出、そのまま赤坂の自宅に寝て、年を越す。
「付記」
記憶にもとづいて簡単な経歴を竝べてみたが、日記とかメモとか几帳面な習慣のまったくない自分には多少の錯誤はないとは云いきれない。特に数字的な記憶は自分でさえあやぶまれる。唯、従来語るのを好まなかった事もまた自分の愚や辱もあえて記録したつもりではある。それとて洩れたものが多かろうと思うが、だからといって故意に除いたりはしていない。