Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

もちろんがなるのも英語である。日本語で怒られるよりも遥かにそれは恐かった。そらッとばかりぼくらは逃げ出す。――しかし、逆にぼくらが彼らに泣かされて帰った場合はどうかというと、ぼくらの母が眼をつり上げて子供喧嘩の干渉に呶鳴って行った例などは一ぺんもない、反対にぼくらは親から叱られて家庭の隅で小さくなっているのがオチであった。

この界隈では、すこし綺麗な女のひとだと思うと、たいがいが洋妾と呼ばれる婦人か、異人館に雇われているアマさん(家政婦)だった。家からすぐ上の桜並木の端れに、上品な老人夫婦の営んでいる小雑貨店があって、ぼくはよく買物のお使いに行ったが、時々そこの店番をしていたきれいな娘も洋妾であった。そしてその美しい娘のためにああして安楽に暮している老夫婦なのだといったような事まで、誰に教えられるでもなく知っていた。

らしゃめん、という語は子供仲間の会話にもよく使われたように覚えている。しかし当時の横浜世相の中では、差別や蔑視のトゲをふくんだ言葉ではなかった。ただ日本人同士の間では嗅ぎ馴れないローズやヴァイオレットの強烈な香水の香りと結びつけて或る特殊生活を連想してみるだけのものにすぎない。