Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
けれど当座は、堪らない少年の孤愁にとらわれ、それからは、アブ公とも口をきかなくなり、日曜日の讃美歌も歌いに行かなくなってしまった。
母は、ぼくを、よく口ぐせに「医者にしたい」と云っていた。父は「ばかをいえ、これからは貿易だ、事業家にする」と云っていた。母の考え方は、母が娘時代を近藤塾で過していた影響であったろうし、父は自分のやっている輸出入業や桟橋会社の事業が好調のさかりだったので「わが子も、将来は横浜で」という考えだったにちがいない。
ぼくは八ツの尋常二年頃から、学課が終っても、毎日、ただ一人だけ、二時間ずつ、学校に残された。そして、一人の英語教師から、英語の単独教授をうけた。
これからは貿易だ、英語だ、という考えと子供への方針から、父が特に山内先生に依頼して、ぼくに早くから外語を身につけさせようとしたものだった。
もひとつの理由は、ぼくの素質と素行を見て、親の眼から「これはいかん」と、何か父の頭に、教育方針の一変を思わせるものがあったのかもわからない。
何しろ、ぼくは遊べなくなっていた。この頃から急に、父のあり方が、前にもまして厳格な存在に映ってきた。