Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
しかしこの祖父についての幾つかの挿話を、ぼくは父の口から聞いていて、いまも忘れていない。じつは、よほどきびしい恐い人だったようである。五石十人扶持とはいえ典型的な封建戸主の一武士であったらしい。
ぼくは吉川だが、ぼくが育った横浜では、吉川と呼ぶ人の方が多かった。だから子供の頃は、吉川だと思っていた。どっちが本当かを父にただしたらやはり吉川が昔からの姓だといった。ついでに、先祖ばなしをぼくに聞かせた。
吉川は橘香という地方名が起りで、何でも富士の裾野にそんな所があったという。戦国の吉川元春もその他の吉川もここから分れたものであり、自分の家も、関ヶ原役の前後、敵方から大久保藩を頼って身を寄せた沢山な浪人の一人だった。だから小田原でもそれらの人間は、外者といわれて下士待遇以上には出られなかった。そして、大久保家へ身をよせた当初の人は法体であったが、中頃には医者も出、やがて平侍になって銀左衛門の代まで来たのだということだった。
いずれにせよ軽輩中の軽輩だったろうが、父はぼくにはそうと云わなかった。だから父の父、銀左衛門の逸話にしても、父の都合のわるい事はぼくに聞かしていないのかもしれない。