Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
そうした父の大酒振りも、ここらで述べておいた方が話の順序にも役立つので、見得もあらもつつまずそんな事も少々書いておこうと思う。
幾歳になっても、親を語るばあいの自分はやはり子供なので、親の追憶像を人なかへ示すだんになると、子としてつい親びいきみたいな心理が手つだってくる。何も偽ってまでよく書こうなどとは決して思わないが、余りに非常識な点だの人間的な短所などは、わが親の像として、何だか彫み出し難い気もちが先立ってくるのである。
だがこんな観念は、近来の十代二十代で早くも親を批判の的とするに馴れている新時代の子たちには、およそ愚にして気の知れないものかもしれない。しかし、ぼくらの内にある古めかしい骨肉感も決して親の威圧で植えこまれた残痕ではなく、否定できない肉体上の、分身の責任感から来るものなのである。つまり父の酒狂像も人間的短所も、ぼくら数人の子へ、まちがいなく多少ずつ遺伝分配されていたにちがいなく、父が現世でやった影踊りは、自分の影でもあるような羞恥を覚えるからだった。
日本間なのだが、二階の父の寝室には、大きな西洋ダンスがおいてあった。あらゆる種類の舶来酒がその棚に並んでいる。