Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
「いえあの、わたくしはあとへのこります」
「なに? なぜじゃ。末始終離れまじと誓った筈なのに、そなたひとりがあとへ残るとは何としたのじゃ」
「誓って馴れ初めました仲ではござりますなれど、わたくしは家つきのひとり娘、御領主様の御恩も忘れてはなりませぬ。親共が築きましたる宿の差配もせねばなりませぬ。いいえ、いいえ、祖先の位牌をお守りせねばならぬわたくし、三とせ前に契るときから、江戸隠密とは承知の上で、こうした悲しい別れの日も覚悟の上で思い染め馴れ染めた仲でござります。――俊二郎さま! お身お大切に! 坊は、この児はあなたと思うて、きっとすこやかに育てまする……。では、さようなら……、さようなら……」
「天晴れぞや。――俊二郎とやら、陸奥の秋風はまたひとしお身にしみる喃」
そこへのっしのっしと来合わしたのは英膳です。
「おう。こちらも御無事で!」
「そちもか。英膳、悲しい別れをそちも泣いてつかわせ」
ひと目でことの仔細を知ったか、早矢の達人の目にも、キラリ露の雫が光りました。――吹くは風、吹くは五十四郡の秋風である