Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

九

導いていった座敷というのも油断がならぬ。

酒がある。

燭台がある。

ずらずらと広間の左右に八九名の者が居並んで、正面にどっかと治右が陣取り、主水之介の姿をみるや否や座をすべって、気味のわるい程にもいんぎんに手をつきつつ迎えました。

「ようこそお越し下さりました。酒肴の用意この通りととのいおりまする。どうぞこちらへ……」

どんな酒肴か、槍肴、白刄肴、けっこうとばかり退屈男はのっしのっしと這入って行くと、座敷の真中にぬうと立ちはだかりました。

九

その夜ふけ……。

丑満近い本所あたりは、死の国のような静けさでした。

もうおかえりか、もう御戻りの頃であろうと、寝もやらず兄の帰りを待ったが、しかし主水之介は、番町の腰本治右屋敷へ乗り込んでいったきり、待てど暮せど一向に帰る気色もないのです。

るすを守る京弥と菊路のふたりは、当然のごとくに不安がつのりました。

「ちとおそうござりますのな。どうしたのでござりましょう。大丈夫かしら?」

「………」

「なぜお黙りでござります! 菊がこんなに心配しておりますものを、あなたさまは何ともござりませぬのか。もう他人ではない筈、いいえ、菊の兄ならあなたさまにもお兄上の筈、一緒に心配してくれたらいいではありませぬか」