Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
三
うれしいと言えばうれしい女の言葉でしたが、しかし主水之介は冷やかに微笑すると、ずばりと言いました。
「毎夜々々、うるさい事を申す奴よな。わしが女子や酒にたやすく溺るる事が出来たら、このように退屈なぞいたさぬわ」
あっさりその手を払いすてると、悠然として揚屋町の方にまた曲って行きました。
こうしてどこというあてもなく、ぶらりぶらりと二廻りしてしまったのが丁度四ツ半下り、――流連客以外にはもう登楼もままならぬ深夜に近い時刻です。わびしくくるりと一廻りした主水之介は、そのままわびしげに、道をおのが屋敷の本所長割下水に引揚げて行きました。
三
屋敷は、無役なりとも表高千二百石の大身ですから、無論のことに一丁四方を越えた大邸宅で、しかも退屈男の面目は、ここに於ても躍如たる一面を見せて、下働らきの女三人、庭番男が二人、門番兼役の若党がひとりと、下廻りの者は無人ながらも形を整えていましたが、肝腎の上働らきに従事する腰元侍女小間使いの類は、唯の半分も姿を見せぬ変った住いぶりでした。しかも、それでいてこの変り者は、もう三十四歳という男盛りであるのに、いち人の妻妾すらも蓄えていないのでしたから、何びとが寝起きの介抱、乃至は身の廻りの世話をするか、甚だそれが気にかかることでしたが、天はなかなか洒落た造物主です、いともうれしい事に