Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

三

助太刀頼んで乗り込んだとあらば眉間傷が悲しがろうわ。京弥!」

颯爽として立ち上がると、時を移さずに命じました。

「このまにも手遅れとなってはならぬ。早う急ぎの乗物用意せい」

――長割下水のあたり、しんしんと小夜ふけて、江戸の名物木枯もどうやら少し鎮まったらしい気勢でした。

三

目ざした鼠屋横丁に乗りつけたのはかっきり四ツ――。

角に乗り物を待たしておいて、武者窓下へ近づいて見ると、なるほど峠なしの権次の言った通り、ちらちらと表へ灯りが洩れて、道場内では話のその宵試合が終ったあとの祝い酒が丁度始まったらしい容子なのです。

「ウフフ。安い酒がそろそろ廻り出した模様じゃな。傷もむずむずとむず痒くなって参ったようじゃ。まさかにこの祝い酒、大工共を首尾よく血祭りにあげた祝い酒ではあるまいな」

「いえ、その方ならば大丈夫でごぜえます。ほら、あれを御聞きなせえまし、夜業でもしておりますものか、あの通り槌の音が聞えますゆえ、棟梁達の首は大丈夫でごぜえます」

権次の言葉に耳を澄まして見ると、いかさましんしんと冴え渡る夜気を透して、幽かに裏口のあたりからトントンカチと伝わって来たものは、まさしく大工達の槌の音でした。