Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

――帰るかのう」

いかさまつむじが言う通り少々左ねじです。主水之介いかに江戸一の名物男であったにしても、時でもない時に釣れる筈はない。だのに、釣れぬと知りつつ、こんな冬ざれの寒風をおかしながら、わざわざ夜釣りにやって来たのは、タナゴ釣りの豪奢極まりない清興に心惹かれたからでした。手竿は、折りたたむと煙管の長さだけに縮まるところからその名の起きた、煙管尺十本つぎの朱ぬり竹、針糸は、男の肌を知らぬ乙女の生毛を以ってこれに当てると伝えられている程の、凝りに凝った大名釣りなのです。

「船頭々々」

「へッ」

「獲物はないが、冬ざれの大川端の遠灯眺むるもなかなか味変りじゃ。そのように急ぐには及ばぬぞ」

「でも京弥様が、寒いゆえ早うせい、早うせいと――」

「申したか! ウッフフ。京弥! なかなか軍師じゃのう。どんな風やら、さぞかし寒かろうぞ。菊めの袖屏風がないからのう。身共も吉原へでも参って、よい心中相手を探すかな」

「ま! またお兄様が御笑談ばッかり、その菊路はここにお迎えに参っておりまする」

言ううちにいつか長割下水の屋敷近くへ漕ぎつけていたと見えて、薄闇の中から不意に言ったのは妹のその菊路です。