Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
「あッ……」
小さなおどろきの叫びが先ず小芳の口からあげられました。見覚えのある顔!
いや、見覚えどころではない。小侍たち六人が飛び出して来たその鶉席に傲然と陣取って、嘲笑うようにこちらを見眺めていた顔こそは、小芳がまだ曲輪にいた頃、梅甫とたびたび張り合った腰本治右衛門なのです。――元は卑しい黒鍬組の人足頭にすぎなかったが、娘が将軍家のお手かけ者となってこのかた、俄かに引き立てられて、今では禄も千石、城中へ出入りも自由のお小納戸頭取というすばらしい冥加者でした。
「あいつめが来ておるとすると――」
「企んで仕かけた事かも分りませぬ。兄さん!……」
小芳はさッと青ざめ、兄の方へ目まぜを送ると、小声で囁きました。
「何とかうまく扱っておくんなんし……」
「よしよし。惚れ合っていると兎角こんなことになるんだ。こっちへどきな」
小作りの下総男、田舎じみた風体をしているが、なかなか扱いが馴れたものです、腰低く小侍たちに一礼すると、人中で騒ぎを起して、近所迷惑になってはならぬと言うように、ひたすらわび入りました。
「こちらこそ飛んだ粗相、本当に三平さんとやらがおっしゃる通りです。