Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
一五
殺気だ。
窺測の殺気だ。
只の殺気ではない。
刺客の窺い狙う殺気です。
ひた、ひた、ひたと足首ころして忍び寄って来たその殺気が、ぴいんと主水之介の胸を刺しました。
刹那です。
「あッ。殿様、狼藉者でござりまするぞッ!」
声より早い。
供の陸尺たちが叫んだまえに、主水之介の身体はさッともうおどり出して仁王立ち、ぴたりと駕籠に身をよせながら、見すかすと、槍、槍、槍、四方、八方、槍ばかりです。
三本、四本。
六本、八本。
いずれも短槍でした。
もも立ち取って、すはだしの黒頭巾、しかも侮りがたい構えなのです。
無言のままぴたりとその八本が八方から穂先をつけて、じりじりと主水之介の身辺へにじり迫りました。
一五
何者?――
一瞬主水之介の目が、稲妻のように光りました。
御定紋なるかな、御定紋なるかな、と、これある限りたとえいかなる狼藉者といえども、刄向う術はあるまいと思われたのに、そのお胸前が眼に入らぬのか、それとも知りつつ不敵な闇討かけたか、もし知ってなお恐れもなく刄向う者ありとしたら、容易ならぬ刺客に違いないのです。
「うろたえ者めがッ。この御定紋、目に入らぬかッ。