Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

早くもその蹄の音から余程の上手と察して、何物であろうかとふり返ったその目にくっきりと映ったのは、逞しやかな黒鹿毛に打ち跨った年若い農夫の姿です。しかもそれが見るからすがすがしい裸馬なのでした。その裸馬を若者は鮮かに乗りこなしつつ、パッカ、パッカと駈け近づいて来ると、ヒラリ馬をすてて、不意にいんぎんに退屈男へ呼びかけました。

「御清興中をお妨げ致しまして相済みませぬ。手前この近くの百姓でござります。川下で馬を洗いとうござりまするが、お差し許し願えませんでしょうかしら――」

「………?」

「あの、いかがでござりましょう? お差し許し願えませんでしょうかしら――」

「………?」

「いけませんようでしたら、明日に致しましてもよろしゅうござりまするが、いかがでござりましょう。お差し許し願えますようなら――」

「まて、まて。返事をせずにいたは、その方の人柄を観ておったのじゃ。そち、百姓に似合わずなかなか学問致しておるな」

「お恥しゅうござります。御領主様が御学問好きでござりますゆえ、ついその――」

「見様見真似でその方達までが寺子屋通い致すと申すか、何侯の御領内かは存ぜぬが、さだめし御領主は名君と見ゆるな。