Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

「ほほう、いかさまあでやかな小娘よ喃。道に踏み迷うたとかいう話じゃが、どこへの旅の途中じゃ」

「………」

「怖うはない、いち夜はおろか、ふた夜三夜でも、そなたが気ままな程に宿をとらせて進ぜるぞ。どこへ参る途中じゃ」

「あの、日光へ行く途中でござります」

「ほほう、左様か。このあたりは道に迷いやすいところじゃ。それにしてもひとり旅は不審、連れの者はいかが致した」

「あの、表に、いいえ、表街道までじいやと一緒に参りましたなれど、ついどこぞへ見失うたのでござります」

「じいやと申すと、そなた武家育ちか」

「あい、金沢の――」

「なに、加賀百万石の御家中とな。どことのうしとやかなあたり、育ちのよさそうな上品さ、さだめて父御は大禄の御仁であろう喃」

「いえ、あの、浪人者でござります。それも長いこともう世に出る道を失いまして、逼息しておりますゆえ、よい仕官口が見つかるようにと、二つにはまた、あの――」

「二つにはまたどうしたと言うのじゃ」

「あの、わたくしに、このような不束者のわたくしにでもお目かけ下さるお方がござりますなら、早くその方にめぐり合うよう、日光様へ願懸けに行っておじゃと、母様からのお言いつけでござりましたゆえ、じいやと二人して参ったのでござります」