Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

「ま! でも、でもあのそんな、ここをお放し下されませ! あの、そんな今お会い申したばかりなのに、もうそんな――」

「いつ会うたばかりであろうと、そなたが可愛うなったら仕方がないわい。どうじゃ。拙者の心に随うてくれるか」

「でも、あの、あなた様は――」

「わしがどうしたと申すのじゃ」

「卑しいわたくしなぞが、お近づくことすら出来そうもないほど、御身分の高いお方のようでござりますゆえ、わたくし、空恐ろしゅうござります」

「しかし、恋に上下はないわい。この通りまだ三十になったばかり、妻も側女もないひとり身じゃ。そちさえ色よい返事致さば、どんなにでも可愛がってつかわすぞ。いいや、そちの望みなら何でもきき届けて進ぜるぞ。親御の仕官口もよいところを見つけて、世に出るよう取り計らってつかわすぞ。どうじゃ、言うこときくか」

「それがあの、本当なら倖でござりますなれど……わたくし、あの只一つ――」

「只一つどうしたと言うのじゃ」

「………」

「黙っていては分らぬ。言うてみい、只一つどうしたと申すのじゃ」

「気になることがあるのでござります」

「どういうことじゃ」

「あの、小さい時、鞍馬の修験者が参りまして、わたくしの人相をつくづく眺めながら、このように申したのでござります。