Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
江戸御免の篠崎流正眼崩しを存ぜぬかッ。その菜切り庖丁をおとなしゅう引けッ」
だのに、身の程もわきまえぬ鼠輩共です。蟷螂の竜車に刄向うよりもなお愚かしき手向いだてと思われるのに、引きもせずじりじりと、爪先立ちになって、九本の刄を矢来目陣に備えながら、退屈男に押し迫ろうとしましたので、京弥が伺い顔に傍らから言いました。
「手間どってはあとが面倒にござりますゆえ、ちょっと眠らしてつかわしましょうか」
「そうのう、では、揚心流小出しにせい」
「はッ。――ちと痛いかも知れぬが、暫くの間じゃ。お辛抱召されよ」
言いつつ、漆なす濡れ羽色の前髪をちらちらとゆり動かして、すいすいと右と左へ体を躱しつつ、駈け違ったかと見えましたが、左の及び腰になっていたのっぽを先ずぱったり、右のしゃちこばっていた薄汚ない奴をつづいてばたり、前の、目を血走らせていた蟹股を同じくばたり、いと鮮かに揚心流遠当てで、そこにのけぞらしました。
とみて、笑止千万な者共です。はや腰を抜かして、へたへたと縁側に這いつくばりつつ逃げおくれた六松をひとり残して、誰先にとなく裏口へ逃げ走り去ったので、あとから追いかけようとした京弥を、退屈男は慌てて制しつつ呼び止めました。