Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
Lesen Sie 湯島詣 (ゆしまもうで) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 62.004 Zeichen · 122 Bildschirme
梓は気も心も沈んでいたから少しも騒がず、もとより驚く仔細はない。静に顧みて、
「私、」
「どこへ行くか、あッ貴様は。」
言葉も荒く、ものに激しているようである。
「谷中の方へ行くんですが、」
「うむ、墓原へでも寝に行くか、嘘を吐け! き様掬摸じゃろう、」とほとんど狂人に斉しい譫言を言ったけれども、梓はよく人を見て、この年少巡査があえて我を誣いんとする念慮のあるのでもなく、また罪人を悪む情が烈しいのでもなく、単に職務に熱誠であるため、自ら抑うることの出来ない血気に逸るのであることを知った。
「貴方御心配には及びません。」と微笑むばかりに涼しく答える。清らかなその面を見ても、可懐しい香の薫の身に染みたのに聞いても、品位ある青年であることが分るであろうに、警官は余り職務に熱心であった。
「名を言え、番地はどこか。」
「…………」
「こら!」と驚くべき声で詈り喚く。
あえて憚る処はないけれども、名告るは惜しい名であった。神月はいい淀み、
「玉……月、」とばかり言葉が濁る、と聞免さず、
「玉……玉……玉何だ、」と畳みかけて尋問する。
「玉月、あ、秋太郎です。」といったが我にもあらず狼狽たのである。