Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「どこへ」

「無論、江戸表だ」

八弥も何か考えていたが、

「よし! 命がけで出かけよう」

「爺、水みたいな粥を煮て、竹筒へ入れてくれ。それを吸いながら、俺は江戸表へ行く! 這っても行く!」

「まあ待て。もう半日寝て」

「半日は重大な時刻だ。寝てなどいられるものか」

「いやその間に、粥が煮える。また、拙者もその半日を、無駄には費さん。少し考えがあるのだから」

と、何か密談を凝した後、八弥はやがて耀蔵と連名して、一通の書面を認め、その署名の下へ、血判を捺して、

「じゃ、行ってくる。その間だけでも、体を休めてくれ」

と、飽くまで友達思いのことばを残して、薪小屋から一本の矢と、竹弓を持って、それを小脇にかかえるが早いか、何処ともなく飛び出して行った。

乾坤堂の客

前黄門松平龍山公の世にも薄命なる隠遁の高楼、含月荘の楼上に今宵もまた、ポチと夕ぐれの燈火が哀れに点いた。

――と、どこからともなく、風を切って飛んで行った一本の矢文が、ぷすっと、その灯のついた窓の柱に立った。

矢文!

気がついたらしい。

お小姓の蘭之助か、杉太郎か、それとも黄門公自身の手か、窓がほそく開くと、抜きとって、すうっと、内へ引き込んだ様子であった。