Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

間もなく帰って来て、

「奴らも、今日はよほど慌てている」

と、言った。

「なぜですか」

と、八弥がたずねると、

「どうやら、含月荘の高楼にいる黄門様が、翌日は、江戸表へご発足になるらしい」

「えっ、あの、九年間も高い櫓の上に住んで下界へ降りたことのない龍山公が、江戸表へご出府になるって」

「そうじゃ。偉いこッちゃ。亀山六万石のお家も、とうとう、お世継なしで、この秋は、絶えるかも知れんでのう」

「それは一体、どういうわけで」

「いつかも、八弥様には、話したことじゃが、黄門様のお側女の血すじの者が、この世の何処かに、四人はたしかにいるはずだが、もう幾年となく尋ねても、それが分らぬ。――とこうする間に、この秋ではや十年。その十年のご猶予が切れれば、六万石にのしを添えて、幕府へ、家名をご返上せねばならんのじゃ。――で、いよいよ、お血統探しは諦めて、幕府へ家名のご返上に出府することになったんじゃろう。何としても、お傷ましい」

「ははあ……」

と、加山は初めて聞いた話に、何か、じっと考えこんでいた。

と、――改まって、急に、

「波越」

「なんだ」

「まことに済まないが、貴公、これから俺を背なかにかけて、発足してくれ」