Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.786 Zeichen · 278 Bildschirme
この波の中に、彼は決して、処世には上手な人であったように思われない。いやむしろその転機の大波のたびに不遇な目に遭ったようである。おそらく二十歳未満に抱いた志であろうが、ただ、その間にも目がける「道」だけは離れなかった。
急変してゆく世相の中に立っても、彼の志操は変らなかったが、境遇はそれに順応して行った。彼は処世下手でも、決して世にすねたり、逆剣をつかう人でなかった。独行道の冒頭に、「世々の道に反かず」と書いているのを見ても窺われる。彼の孤独と不遇を、生涯、彼に持ち続けさせたものは、やはり「道」のためだった。求道一すじへの犠牲だった。彼自身は、それについて、みじんでも悔いたような痕はない。だから今日の僕らが、彼の生涯とその姿の一面を「惨心の人」とは観るものの、武蔵自身は満足して、いつも、いっぱいな志望と愉悦を持ちきって、終ったろうとも考えられるのである。その点、宮本武蔵を語るには非常な明るさがある。他の漂泊歌人の出家や、涙痕の行脚者を想うほどな傷みがない。そして、それらの歌人や俳人の遍歴は、人間を避けて自然のふところを慕っているのであるが、武蔵のそれは、行雲流水の裡に身をおいても、いつもその視界は人間の中にあった。