Japanische Klassiker mit Furigana
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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Lesen Sie 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.786 Zeichen · 278 Bildschirme
泰勝院へ
乱世に呱々の声をあげ、中国山脈の美作国の一山村に育って、その家郷を離れてから死に至るまで、およそ宮本武蔵という人は、肉親や知己に恵まれない人であった。養子はあるが、妻子はなかったし、晩年の知己と頼んだ細川忠利ともかく薄縁で別れてしまった。もし武蔵をしていわしめたならば、一生涯の中で自分が最も悲痛に打たれて落胆した時は、その忠利公と別れた時というであろうと察しられるのである。いずれにせよ、彼は生涯逆境の人であった。しかしまた、逆境が彼の剣と心業とを不断に磨いて円明二天の澄徹した境地を大成させたともいえると思う。
泰勝院へ
碑前を去って、私たちが自動車へ戻りかけると、その前から私たちの後ろに佇んでいた三名の慇懃な老紳士と袴を着けた青年が側へ寄って来て、
「龍田山の泰勝院へお廻りになりませんか」
と、物静かに訊く。
泰勝院というのは、武蔵が晩年の心友であった春山和尚のいた寺であるし、その春山和尚が武蔵の棺を巨きな石の上にのせて引導したという引導石もあるそうだし、廻って見てもよいと考えたが、私は観光局や市の吏員に引廻されている身なので、その人達の今日のプランを計りかねて答えずにいると、