Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
第六話
一
「待ってました」と伴れの男が云った、「野郎を叩き起こして一杯買わせるとしよう」
そしてなお、わけのわからないことを喚きながら、宵闇の中へ消えていった。
まもなく、屋形船の障子があき、おしのが半身を乗りだして、川の水で両手を丹念に洗った。そして障子を閉めると、暫くして艫のほうへ出て来たが、そのときはもう頭巾をかぶってい、片手に持った袱紗包みの中から麻裏草履を出してはくと、危なっかしい身ぶりで岸へとび移った。
「お父つぁん」とおしのは空を見あげて囁いた、「あと一人よ、それまで力を貸してちょうだいね」
おしのは土堤へ登り、寺島のほうへゆっくりと去っていった。屋形船は暗く、ひっそりと、音もなく岸につながれていた。
第六話
一
おしのは、窓際に倚って、川の対岸の火事を見ていた。
その家は東両国の橋詰で、相生町の河岸にあり、裏は隅田川に面していた。それは「丸梅」の源次郎が指定した家で、おもてむきは踊りと長唄の稽古所となっている。その看板が二枚掲げてあるし、三十四、五になるきれいな女主人と二十二、三のあだっぽい女がい、ほかに女中が二人と下働きが幾人かいるらしい。女主人はおたき、若いほうはおきぬといって、藤野なにがしとかいう三千石ばかりの旗本の、囲い者だということであった。