Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
善をのみなつかしむのではない。悪をもなつかしむのだ。いっそ善悪を分別せぬ人間の在りのままの相に身を沈めて行くのだと云った方がよい。即ち化身の所作である。化身とは捨身である。苦痛にちがいない。慈悲の根底にある無限の忍耐、云わば人生を耐えに耐えたあげく、ふとあの微笑が湧くのかもしれぬ。救世観音や中宮寺思惟像の微笑は極度に内面化されたものだ。あの口辺をみていると、何かを言おうとして口ごもっているように感ぜらるる。それは微笑の寸前であるとともに、慟哭の寸前でもあるようにみうけられる。菩薩の微笑とは、或は慟哭と一つなのかもしれない。凄惨な人生に向って、思わずわっと泣くほんの少し前に浮び出る微笑であるかもしれない。
我々はただ口辺に気をとられているが、口辺の微笑とは、おそらく余韻だ。菩薩の心奥には七転八倒の苦悩があり、言うに言われぬ思いがあり、どうにも致し方がなくて、あたかも波紋のように浮べてみたのが微笑なのかもしれない。それは瞬時にして憤怒の相ともなり、慟哭の表情とも変るであろう。救世観音や思惟像の微笑は永遠なるものとして刻まれているが、それは同時に刹那だ。