Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
トランクの中には、死ぬまで手離すまいと大切にしていた母が手織の太織縞の袷も入っていた。そのとき、ふと感傷的になったのを、いまでも記憶している。
その金で、相州小田原までの汽車の切符を買った。そして十二月から翌年の二月まで、小田原の友人の家へ居候していた。小田原の友人は、家なき私に親切であった。
ところが、友人は私にもてなす酒のことで細君と喧嘩した。それが、二度、三度と重なったのである。
『おれの友達の、面倒がみられないようでは困る』
と、友人が細君をたしなめると、
『それも程度問題ですわ』
と、応酬した。
『それはいかん。どんなことでも、不平がましい顔を禁ずる』
『では、うちの経済がもちませんわよ』
『経済なんぞ、どうでもいい。破産してもかまわねえ』
『うちには、破産するほど財産なんかないでしょう』
細君は一つも良人に負けていない。
『財産がないのがいやなら、出て行けっ』
『じゃあなたは、自分の家内より友達の方が大切なんですか』
『なにい』
『身のほども知らないで、居候なんか抱えこんで』
『うぬっ! 生意気っ!』
とうとう、悪化してきたようである。
隣座敷で、私はこれを聞いていた。