Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
だが、この金華山沖では、南極のような訳にはいかない。それでも、ここは日本近海第一の鯨漁場だ。
日本の近海には北は千島、北海道。それから金華山沖、房州と下ってきて紀州、土佐。南は小笠原島から台湾。西は九州五島沖、玄界灘。北は、朝鮮近海まで随分数多い漁場があるが、それで一ヵ年にとれる鯨は僅かに二千頭前後である。その中の三分の一の七百余頭がこの金華山沖で捕れるのだから、まず日本一の漁場は金華山沖ということになる。
この漁場には抹香鯨と、鰮鯨が一番多い。鰮鯨は五十尺程度のもので、一頭三、四千円の値打ちで大したものではないが、こいつの肉は素敵においしい。自分たちは、その肉を毎日食っている――
昼食の用意ができました、と給仕が知らせてきた。
食堂へ行ってみると、これは驚いた。あらくれ男が乗っている捕鯨船には大したご馳走はあるまい、と考えてきたのだが、この卓上には真鯛の塩焼き、鯛のうしお、野菜サラダに新菊のごまあえ、それに、鯨肉の刺身である。
もう一つ、卓上を飾ったものは、冷たい麦酒の壜だ。
三
鯨の刺身を食うのは、はじめてである。まず、これに箸をつけて口へ持っていった。