Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
四
夕飯のときがきた。
甚だ不躾けの話だが、早く夕飯のときがくればいいと待っていたのである。またも、卓上は山海の珍味だ。捕鯨船というのは、おそろしくご馳走を食わせるところだ。
鰹のたたき、あいなめの煮物、船で作った絹漉しの冷奴、大根の風呂吹き。これだけあれば食いきれないのだけれど、次に出た鯨肉の水たきが俄然食欲を煽動する。加役に葱、新菊、豆腐の入った鍋の中を、賽の目に刻んだ鯨が泳いでいる。
食った、食った。額からも、胸からも汗が滝のように流れ出した。
翌日は、早朝から濃霧がからりと消え去った。全乗組員が、一斉に緊張する。金華山と、鮫の港を繋いだ線の百三十哩沖で、とうとう一頭の鰮鯨を仕とめた。長さ五十二尺、重さは六十トンもあろうという雌だ。
このお祝いを食堂ではじめた。まず出たのが挽肉でこしらえた鯨のメンチボール、酢味噌に醤油漬けの焼物。これでもか、これでもかというあんばいである。だが、私はなかなかへこたれない。晒し鯨の酢味噌と異なって生鯨には、肉そのものに清快な風趣がある。メンチボール、これは温かい上に柔らかで、何と結構な料理だろう。
この鰮鯨一頭で、乗組員一同の一ヵ月分の給料と賄費は儲けた。