Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
けれど、ふみちゃんは、姉と一しょにぼくの家へ来ても、めったにぼくへ口もきかないし、遊ぶといっても打解けてはくれない。唯一ぺん、月の晩、大勢で隠れンぼをしたとき、二人してよその小暗い塀の蔭に潜み、やがてほかの子がみな出て行っても、二人だけで寄り添ったまま、そこに屈みこんでいて、おたがいの息づかいを意識しながらわざといつまでも隠れていたことがある。
一葉の“たけくらべ”をみると、浅草界隈の事だったあの時代の世間が、横浜のぼくらの子供仲間にもそっくりその儘あった気がする。オテイちゃん姉妹のことを、今でもこう鮮らかに瞼に描けるのは、やはりもうぼくの少年期にも、はっきりした異性への思慕が芽生え出していたからであろう。けれど、ふみちゃんに関するかぎり、思い出せる濃い記憶は、その月の晩一ペンの事でしかない。ふみちゃんは、学校の卒業まぎわに入院し、やがて病院で死んでしまった。胸が悪かったのかもしれない。ふだんからそんな翳のみえる少女であった。
陽気なオテイちゃんは、いつも陽気に見せている裏に、じつはぼくの義兄政広に恋していたように思われる。けれどオテイちゃんも恋をすると日本娘とちがわなかった。