Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

掃除は何でもないが、朱塗りの木枕と男枕の並んでいる夜具を畳んで押入れに押し込むあいだ、何ともいえない少年の潔癖と反骨がうずいて、蒲団の起す生温い風やチリに顔をそむけた。

台所には女中もいるのに、それをぼくの朝仕事に課したのは、ぼくがまだ何も分らない年少のチビと思ってさせた事だったにちがいない。何がといって、主人夫婦の二つの枕を手に持って片づけるほど厭だった思いはない。板の間で冷や飯を食べ、雑巾バケツの側で叱られ、又、おかみさんの足腰を揉ませられる事よりも、それは奴隷的な屈辱感に汚される心地であった。人間の最下級の仕事であるように子供心にも思われた。

これが済むとお極りのランプ掃除であった。横浜市もまだ全市電灯になっていなかったとみえ、街灯も殆んどまだ青白い瓦斯灯だった。よほど大きな問屋とか病院とかでないとその瓦斯灯もまだ各家庭にまでは普及されていなかったように思う。

ランプ掃除は、ぼくら少年は家庭でもよくやらせられたもので、これはさして辛いとも思わなかった。しかし、食後にもう一つ日課があった。それは茶の間と次の間に据えてある桐箪笥やら用箪笥に艶布巾をかけることだった。