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Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

それでも働きに出るぼくには二銭銅貨一枚を詫びるように握らせて出してくれる。ぼくは途中で焼芋を買い、半分は途々喰べ、半分は昼飯時の為に残しておいた。ほかの仲間の手まえ、何も喰べずにうろついているのは、空腹を我慢している事よりもその時間が辛かった。

日が暮れて、家路につき、案じていた家の内に、ランプの灯がついていると、ふしぎな気がした。朝出るときは、母の帯の間に、数枚の銅貨しか見えなかったのに、どうして今夜の石油が買えたのか、小さい弟妹たちが、何を喰べて生きていられたろうかと思われるからであった。――が、そんな晩にでも、父の面には酒気が見えた。ぼくは不逞な気もちを内につつみながら「ただ今」という形だけを父の前にした。父から何か話しかけられても、ぼくは素直でなくなっていた。稀、それが父の気もちにさわったらしく「何だ、その大面は。わずかばかりの給料を取って、働くのを鼻にかけるのか。人間、働くのは当りまえだ。働くのが嫌なら、やめちまえっ」と、恐ろしいけんまくで、呶鳴られたことなどある。

窮乏に追いつめられた母は、冬の初め頃、ついに長女の、きのという十二歳を、よそへ奉公に出すことにきめた。