Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
と、忌み嫌う容子を見せた。ぼくには実際のところ、そういうふて腐れを父には露骨に見せたことが無いとはいえない。けれど母はそんな気持ちの人ではない所か、貧しくなればなるほど、この良人も子供も捨てて自分だけの生きる途などは考えもしない人であった。父がそんな嫌味を云って母を泣きもだえさせたり、無茶な暴言の限りを浴びせて、酒気芬々としているのを見ると、ぼくは自分も狂気しそうになり、幾たびか父を撲りかけたくなった。酒の上の心理状態などは子供のぼくに理解はできなかった。酒狂の父そのままを、父の人間と考えつめ、母と共に部屋の隅ッこで働哭した。いくたびか、ぼくはぼくだけで、よそへ出て生きる途を探しますと叫んで、台所から裏まで、飛び出したこともあるが、母に追いすがられて「英ちゃん、おまえが居なくなったら、このお母さんは、どうしたらいいの」と云われると、ぼくは一歩も動けなくなってしまった。それでも父へは、ややもすると、母に代って、つい突ッかかりたくなった。そしては母に泣かれて又、台所で足を拭き、家の中へ戻って、心にもなく父の前に謝った。そんな例は、前後何べんあったであろうか。