Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
意地という程、はっきりした気持ちではないが、廉恥があった。――しかし、売子宿の店主から、そう云われると、何か安易な気もちもして、依頼心をそそられ、行かないのは自分の馬鹿なせいかもしれないと思った。又、沢山な売上げを得て、店主の前に、誇ってみたいような気も手伝った。
それから数日後、ぼくは方向を更えて、山手方面を歩いた。そして、歩くにまかせて、父の以前の知人をたずね、間の悪さを忍んで「この頃、小間物の行商をしてるんですが」と、顔を真っ赤にして云ってみた。ハー・アーレンス商会に勤めている三浦さんの家で、競馬石鹸一箱を買ってくれた。富樫夫人の家は留守だった。その日だったか、翌日だったか、おなじ山手の牛島坂に新邸を建てた古川某と標札の見える宏壮な門をくぐっていた。
この古川氏は、父が桟橋会社経営の初期には、波止場人夫の小屋を持って、振りの人夫売込みなどを業としていた人らしい。父は人を信じると一本ヤリな質なので、この人の人間にも惚れこんで、会社の専属に取立て、社の請負った桟橋の積込み、沖仕事、石炭の売込みといったような下請けの一切を、古川氏に委せていた。それが因で古川氏は成功を積み、牛島坂の高台に、横浜中を一望にできるような高楼と庭園を作って、今では波止場仕事からも一切手を引き、余生を楽しんでいる風だった。