Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
ぼくはあてもなく家を飛出しては、夜おそく帰った。書物を持ち出しては古本屋へ売り、それを小費いとして遊ぶことを覚えた。羽衣座、賑座、喜楽座と大入場の中に潜って終日を過しながら、家には職探しに歩いたような顔をして帰った。木戸銭も無い時は横浜公園のベンチで塩豆か何か齧っていた。おなじ年頃の不良少年がいくらも居た。浮浪者もうようよいる。そこでは何か安息感に似たものにくるまれた。彼らはすぐ話しかけて来、時には協同の行動をすすめてくる。ぼくは臆病なので彼らのような大胆にはなれず、危険を感じると尻込みしたが、小さい悪事にはくッついて歩いた。そして些細な分け前にありつくと、公園の木蔭で貪り食った。多くは、南京町の裏だの、元町のお薬師さまの縁日だの、砂糖馬車の入る倉庫などから掻っ攫って来る物だった。
しかし、公園の悪の巣は周期的に警官の一掃に会う。すると、その日から仲間は人ッ子一人見えなくなる。公園に行けない日は、ぼくは伊勢佐木町をうろつき廻った。売る本も無くなっていた。汁粉屋の小女に奉公している妹のカエを店の外へ呼びだして「お母さんが困ってるから」と偽ったりした。