Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

その上を、われら船具部の連中は、木靴で平地を行くように渡るのである。ドックに水のあるうちはまだいいが、排水がすむと、下は何十呎か知れない眼がまわるような深い石だたみだ。ぼくは初め、彼らの命知らずな作業を見て、見ているだけで足がふるえた。人間業に見えなかった。けれどやがてぼくも同じことをしなければならず、いやおうなくやらせられた。

恐い仕事、危険極まりない作業はツチ渡りだけではない。ダンブルの中の暗闇仕事、製缶工の手伝いや何かでマストや煙筒へよじ登るばあい、一本のロップに縋って船のトモからスクリュウへ降りたり、ぶらんぶらんする足場板に乗って競技的に船腹塗りのレッド・ペンキにまみれる時など、ぼくの体躯にはすべて過重な労働である余り無我夢中でやってはいたが、ふと生命の戦慄に足もすくんでしまうことは一再でない。毎日が命がけだった。

だからふと、朝、家を出るときなど、「――夕方にはこの家へ帰って来ることができるか、どうか」と、よく思ったりして出た。わけて冬中は、まだ暗いうちに戸部の横丁から霜を踏んで出るので、そんな感傷がよけい胸をついた。

組長の猪子さんの家は、どこか近所だったとみえ、よく途中で会った。