Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

春の豆汽車

それと、も一つのニガ手は、英語である。英語は必修課目として、父があんなにまでして、ぼくの幼少頃から身につけさせようと計っていたものなのに、父の意図は、子のぼくにとっては、全く、ぼくの胃と牛乳の関係みたいなものになってしまった。日も暮れかかるガランとした学校の教室にただ一人残されて、ナショナル・リーダーへ、ぽとんぽとん涙をこぼした童心の牢獄感が、いつかしら胃が牛乳をつきあげるのに似た特異質をぼくの中に育成していたのであった。その後、年を経てからは、語学の欠如に自分でも気がつきもし、また大いに後悔もして、ある期間は、文学書の耽読をやめて、それの勉強に専念したこともあるが、語学ばかりは、頭に入らないのみか、てんで体が拒んで根気もつづかないのだった。今でもなお牛乳と英語にたいするぼくの生理には変化がない。

春の豆汽車

まもなくぼくの家はまた、横浜市の西郊にあたる南太田へ移ったので、ぼくの遊行坂時代は二年か二年半ぐらいの期間でしかなく、自然、小学校も変ってゆき、山内先生や御新造先生ともお別れしたのであるが、遊行坂時代の記憶で、なお思い出にある幾つかを順序として書いておくことにする。