Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

だが、肝腎なこの吉益その人については、それ以外には何もぼくには知る所がない。――どうもこうしてみると、ぼくの“忘れ残り”の量よりも世間の誰かが何処かで持っている“忘れ残り”の方がよほど多く、また話も具体的のようでもある。何とも忸怩たらざるをえない。

ついでに、なおもう一つ書き添えたいことがある。前述の河内夫人のお手紙に見える河内信弥太氏が、後日わざわざ、私の宅をお訪ね下すった事である。それで私のえがいていた母方の縁ぺきやら生家の模様も一そうはっきりしたし、かつまた、そのさい河内氏から聞いて意外に思ったこともある。一昨年頃、重要無形文化財に指定された人形作家の堀柳女さんの実家と、私の母方の生家とは、おなじ佐倉藩であるばかりでなく親戚関係でもあったという。私はそれ以前に、文春から出版された柳女さんの著書“人形に心あり”なども読んでいたが、ゆめにもそんな点は気づかずにいた。けれど河内氏からそう聞いて、さっそく、もいちどその書を繙いてみると、なるほど柳女さんの実家の姓として柿内と書いてある。思い出すと、柿内という姓を私も幼少に母の口からよく聞いていた。これなどは“忘れ残り”を書いた為に教えられた一つである。