Japanische Klassiker mit Furigana
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「しなゆうき」
支那游記
Lesen Sie 支那游記 (「しなゆうき」) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.859 Zeichen · 105 Bildschirme
九 戯台(上)
九 戯台(上)
上海では僅に二三度しか、芝居を見物する機会がなかった。私が速成の劇通になったのは、北京へ行った後の事である。しかし上海で見た役者の中にも、武生では名高い蓋叫天とか、花旦では緑牡丹とか小翠花とか、兎に角当代の名伶があった。が、役者を談ずる前に、芝居小屋の光景を紹介しないと、支那の芝居とはどんなものだか、はっきり読者には通じないかも知れない。
私の行った劇場の一つは、天蟾舞台と号するものだった。此処は白い漆喰塗りの、まだ真新らしい三階建である。その又二階だの三階だのが、ぐるりと真鍮の欄干をつりた、半円形になっているのは、勿論当世流行の西洋の真似に違いない。天井には大きな電燈が、煌々と三つぶら下っている。客席には煉瓦の床の上に、ずっと籐椅子が並べてある、が、苟も支那たる以上、籐椅子と雖も油断は出来ない。何時か私は村田君と、この籐椅子に坐っていたら、兼ね兼ね恐れていた南京虫に、手頸を二三箇所やられた事がある。しかしまず芝居の中は、大体不快を感じない程度に、綺麗だと云って差支ない。
舞台の両側には大きな時計が一つずつちゃんと懸けてある。(尤も一つは止まっていた。