Japanische Klassiker mit Furigana
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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Lesen Sie 新・水滸伝 (しん・すいこでん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 684.899 Zeichen · 1374 Bildschirme
「美い男! 顔を洗って出直して来い」
武行者は、少年郎の革帯をつかんで、酒屋の前の谷川へ抛り投げた。連れの三人は青くなって「――若旦那ッ」とばかり崖の下へ向って、その体を拾いに行った。
「わははは。まるでこの行者に、お布施を授けてくれたようなもンだ」
武行者は、店へ入るやいな、かの垂涎三尺の眺めにたえなかった青花模様の上酒甕を抱え込んで大いに笑った。そして羨望の甘露をごくんごくんと飲みはじめ、またたくうちに空ッぽにしてしまった。
のみならず、そこらの肉を腹いッぱい平らげた上、腰を抜かしている亭主を尻目に、
「ああ、いい気分、冬も忘れる……」
蹌々踉々、村道を風に吹かれて歩み、一つの桟橋の向うから、谷川ぞいの道を、のぼりまた降り、いつか夜はとっぷりとなったのも忘れ顔に、鼻唄で歩いた。
「おや、行き止まりか? はてな」
戻ろうとしたのは、やたらに鹿柴みたいな枯れ木や竹が道をふさいでいたからだった。ところが、ちょいとまごつくと、縄やら何やらがすぐ足を取る。大酔していたせいもあろう。武行者は二度も三度も谷水の汀にすべってズブ濡れになった。冬十一月の寒冷な谷水、さすがの酔も、ぶるッと一瞬に醒めかけた。