Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
旗本退屈男
一
一
その第六話です。
シャン、シャンと鈴が鳴る……。
どこかでわびしい鈴が鳴る……。
駅路の馬の鈴にちがいない。シャン、シャンとまた鳴った。
わびしくどこかでまた鳴った。だが、姿はない。
どこでなるか、ちらとの影もないのです。見えない程にも身延のお山につづく街道は、谷も霧、杜も霧、目路の限り夢色にぼうッとぼかされて只いち面の濃い朝霧でした。しっとり降りた深いその霧の中で、シャンシャンとまた鈴が鳴りました。遠くのようでもある。近くのようでもある。遠くと思えば近くに聞え、近くと思えば遠くに聞えて、姿の見えぬ駅路の馬の鈴が、わびしくまたシャンシャンと鳴りました。――と思ったあとから、突如として、声高に罵り合う声が伝わりました。
「野郎ッ、邪魔を入れたな。俺のお客だ、俺が先に見つけたお客じゃねえかッ」
「何ょ言やがるんでえ、おいらの方が早えじゃねえか、俺が見つけたお客だよ」
鈴のぬしの馬子達に違いない。暫く途絶えたかと思うとまた、静かな朝の深い霧の中から、夢色のしっとりと淡白いその霧の幕をふるわせて、はげしく罵り合う声が聞えました。
「うるせえ野郎だな。どけッてたらどきなよ。